【第17回】資産形成は「P/L思考からB/S思考へ」|年収より大切なのは、何を持っているか

PL思考からBS思考へのアイキャッチ画像 投資の考え方

私たちは、思っている以上に「P/L的な見方」をしているのかもしれません。

たとえば、クレジットカードやローンの申込では、「年収はいくらですか」と聞かれることが多いと思います。

人と人との出会いの場でも、「年収はいくらくらいなのか」は比較的話題になりやすい。

一方で、

「金融資産はいくらありますか?」

「借金はいくらありますか?」

まで聞くことは、普通あまりありません。

でも、財産形成という意味では、本当に大切なのは年収だけではありません。

極端な例を挙げれば、年収1,000万円のエリートサラリーマンでも、浪費やギャンブルなどによって1億円の借金を抱えているかもしれません。

逆に、年収はそこまで高くなくても、借金が少なく、株や現金などの資産を長年積み上げている人もいるでしょう。

どちらが経済的に強いのか。

これは、年収という数字だけを見ていても分かりません。

「いくら稼いだか」ではなく、「何を持っていて、何を負っているのか」。

私は、資産形成ではこのB/S的な発想が非常に大切だと思っています。

P/LとB/Sは、何が違うのか

難しく考える必要はありません。

P/L(損益計算書)は、簡単に言えば、

「一定期間で、いくら稼いで、いくら使って、いくら利益が残ったか」

を見るものです。

一方、B/S(貸借対照表)は、

「今この瞬間に、どれだけ資産があり、どれだけ負債があり、差し引きどれだけ純資産があるか」

を見るものです。

個人に置き換えるなら、

給与収入はP/L。

生活費もP/L。

一方で、

株式。

現金。

不動産。

住宅ローン。

その他の借入金。

こうしたものはB/Sです。

年収が高くても、収入をほとんど使い切り、借金だけが増えていけばB/Sは強くなりません。

逆に、毎年の収入から少しずつ良い資産を積み上げていけば、時間とともにB/Sは強くなっていきます。

私は、長期の資産形成では、この違いがかなり大きいと思っています。

株式投資にも「P/L思考」と「B/S思考」がある

株式投資でも同じです。

短期売買を繰り返す投資では、

「今年いくら儲かったか」

「この売買で何万円取れたか」

という発想になりやすい。

これは、どちらかといえばP/L思考です。

もちろん、それで継続的に利益を出せる人もいます。

ただ、私自身はそのやり方ではありません。

私が目指しているのは、

良質な資産を自分のB/Sに少しずつ積み上げていくこと

です。

100万円で買った株が150万円になり、その会社が利益を伸ばし、配当も増えている。

私は、そういう資産を簡単には売りたくありません。

なぜなら、売却益を確定してP/Lを作ることよりも、

B/Sの中に優良資産として残しておきたい

からです。

資産形成は「総額」だけでなく「質」も重要

私は、資産形成とは単に資産額を増やすことではないと思っています。

大切なのは、

資産の質を上げながら、総額も増やしていくこと。

です。

たとえば同じ1,000万円の株式資産でも、

将来性が乏しく、含み損を抱え、配当も不安定な銘柄ばかりの1,000万円と、

利益が成長し、財務が健全で、増配を続ける企業の1,000万円では、意味がかなり違います。

だから私は、自分のポートフォリオを、

「いくらあるか」だけではなく、「何でできているか」

という目で見るようにしています。

私が考える「優良資産」とは

では、私がB/Sに積み上げたい「優良資産」とは何か。

私なりに整理すると、まず、できるだけ簿価を大きく毀損しにくいことです。

株ですから値動きはあります。

しかし、長期的に見て極端な乱高下を繰り返し、買値を大きく割り込んだまま戻らないような銘柄ではなく、比較的安定して価値を保てる会社がいい。

次に、成長性があること。

ただし、成長のために大きな賭けを繰り返す会社より、

成長はするが、失敗したときのダメージが限定的な会社

を私は好みます。

そして、長期にわたり安心して持てること。

さらに、

配当を定期的に出し、企業の成長とともに配当も増えていくこと。

こういう会社は、私の中では「B/Sに置いておきたい資産」です。

図:資産形成は「P/L思考からB/S思考へ」

ここまでの話を一度図で整理すると、

短期の利益を積み上げる発想から、良質な資産を積み上げる発想へ

という今回のテーマが、かなり分かりやすくなると思います。

含み益は、B/Sが強くなっているサインでもある

株式には「簿価」と「時価」という考え方があります。

100万円で買った株は、取得時点では100万円の資産です。

その後、株価が150万円になれば、時価では150万円の資産になります。

売却していないので、50万円は含み益です。

厳密な企業会計とは処理が異なりますが、個人の資産を「自分株式会社のB/S」として考えるなら、

含み益が増えているということは、保有資産の価値が膨らんでいる

と見ることができます。

ただし、含み益の全額が、そのまま自由に使える純資産というわけでもありません。

売却すれば税金が発生するからです。

だから私は、時価評価した資産を見るときには、

「この含み益の一部には、将来支払う税金も含まれている」

くらいの感覚で見ています。

サラリーマンは、自分だけが働かなくてもいい

ここも、私がB/S思考を大切にしている理由の一つです。

サラリーマンが労働によって得られる収入には、ある意味で限界があります。

昇給や昇進はあります。

転職によって収入が増えることもあるでしょう。

しかし、自分自身が一日に使える時間は24時間しかありません。

どれだけ一生懸命働いても、自分一人が働いて稼げる金額には、どうしても限界があります。

だから私は、働いて得たお金の一部を、少しずつ株という資産に変えてきました。

自分だけが働くのではありません。

株にも「いい仕事」をしてもらう。

そんな感覚です。

良い会社なら、自分が会社で働いている間にも、その会社の社員たちが商品を作り、サービスを提供し、利益を生み出してくれます。

海外で事業を伸ばす会社もある。

新しい商品を作る会社もある。

M&Aによって事業を拡大する会社もある。

そして、その成果の一部を配当として株主に還元してくれる。

そういう株を少しずつ積み上げていけば、自分だけが働いている状態から、

自分+保有している企業にも働いてもらう状態

へ少しずつ変わっていきます。

私にとって株式投資は、この感覚が非常に大きいのです。

配当は、強くなったB/Sから生まれるP/L

良い株を積み上げる。

B/Sの資産サイドが大きくなる。

その企業が利益を出し、配当を払ってくれる。

すると、その資産から定期的に現金が生まれます。

私の感覚では、

配当は、強くなったB/Sから生まれるP/L

のようなものです。

よく、

「億り人になりたい」

「将来は配当金生活をしたい」

という話を聞きます。

でも、配当金だけを直接増やそうとしても限界があります。

その前に必要なのは、

配当を生み出してくれる良質な資産を、どれだけ大きく積み上げられるか

だと思っています。

つまり、

P/Lを大きくしたいなら、その前にB/Sを強くする。

私は、その順番だと考えています。

だから私は、含み損銘柄を長く放置したくない

この考え方に立つと、なぜ私が含み損銘柄を長々と抱えたくないのかも説明できます。

含み損になっただけで、すぐに売るわけではありません。

市場全体が下がっているだけなら、問題ないこともあります。

しかし、

会社固有の問題がある。

業績が伸びない。

競争力が低下している。

今後の成長理由が見つからない。

それでも、

「買値まで戻るまで待とう」

と何年も持ち続ける。

私は、それをあまりしたくありません。

なぜなら、自分のB/Sの中に、

質の良くない資産を長期間残している

ことになるからです。

それなら一度整理して、もっと将来性があると思える資産に入れ替えた方がいい。

以前書いた「盆栽的投資法」にも近い考え方です。

伸びる枝は残す。

弱った枝は剪定する。

そうやって、B/S全体の質を少しずつ高めていく。

私はそれが長期投資だと思っています。

私のB/Sで「親孝行」してくれている株

今の私のポートフォリオで、

「これはよく育ってくれたな」

と思う銘柄はいくつかあります。

代表的なのは三菱商事です。

もちろん、その後バークシャー・ハサウェイが総合商社株を買い、市場評価が大きく変わったという運もありました。

それでも、長期保有してきたことで、私の資産形成に大きく貢献してくれました。

業界を変えると、全国保証も私の中では良い資産の一つです。

比較的アセット型のビジネスで、収益構造に強みがあります。

東京海上ホールディングスもそうです。

損害保険というビジネスの中で、業界トップとして価格決定力を持ちやすい。

そしてサンリオ。

強いキャラクターIPを持ち、コアなファンが多く、高い収益性を実現できるビジネスモデルを構築しています。

こういう企業を、

株価が大きく下がったときに買う。

ここが私は大事だと思っています。

良い会社だから、どんな値段でも買えばいいわけではありません。

長く持ちたい会社をあらかじめ見つけておき、株価が急落したときに買う。

そうすると、時間とともにB/Sの中で良い資産に磨かれていく可能性が高くなる。

私はそんなイメージで株を買っています。

もちろん、ここで挙げた銘柄を推奨しているわけではありません。

あくまで私自身の保有例です。

投資判断は、それぞれが自分の責任で行う必要があります。

高い年収より、強いB/Sを作る

私たちはどうしても、年収に目が行きます。

年収500万円。

年収1,000万円。

年収2,000万円。

数字が大きいほど、

「経済的に余裕がありそうだ」

と思います。

でも、本当はその人のB/Sを見なければ分かりません。

年収が高くても、ほとんど使い切り、借金ばかりなら純資産は増えません。

反対に、年収がそれほど高くなくても、毎年少しずつ良い資産を積み上げ、負債を抑えていれば、時間とともに純資産は大きくなります。

だから私は、

「いくら稼いでいるか」より、「何を積み上げてきたか」

の方が、長期では重要だと思っています。

まとめ

資産形成を始めると、

「今年いくら儲かった」

「この株で何万円取れた」

という話に目が行きがちです。

でも私は、長期投資では少し違う見方をしています。

大切なのは、

自分のB/Sに何を残せたか。

良い会社の株を積み上げる。

その株が成長する。

時価が上がる。

配当が増える。

そして、その配当をまた次の資産へ回す。

そうやって、

B/Sが大きくなり、そのB/SからP/Lが生まれる。

私はこの形が、長期の資産形成では理想だと思っています。

サラリーマンは、自分だけが働き続ける必要はありません。

働いて得たお金の一部を優良な株式資産へ変えて、

その株にも「いい仕事」をしてもらう。

その会社が利益を生み、配当を出し、企業価値を高めてくれる。

そして、そういう資産を一つずつ増やしていく。

資産形成とは、単にお金を増やすことではありません。

良質な資産を積み上げながら、自分のB/Sそのものを強くしていくこと。

だから私は、

「P/L思考からB/S思考へ」。

この発想を大切にしています。

そして、将来配当金だけで生活できるような状態を目指すのであれば、

最初に考えるべきなのは配当金額ではなく、

その配当を生み出してくれる資産を、どれだけ良い状態で持っているか。

私は、そこからだと思っています。

奥野以道

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