高配当株という言葉には、分かりやすい魅力があります。
私が投資を始めた頃、日本はデフレの時代でした。銀行にお金を預けていても、ほとんど利息はつきません。
それなら企業の株主になって、配当を受け取った方がいい。
そんな考えも、私が株を少しずつ買い続けてきた理由の一つです。
私はこれを、半分冗談のように「貯金ではなく貯株」と考えてきました。
そして現在は、当時とは少し状況が違います。
物価が上がるインフレの時代では、現金を持っているだけでは購買力が少しずつ低下します。だから私は、余裕資金の一部を株式などの資産として持っておくことには、今でも意味があると考えています。
もちろん、株には値下がりがあります。元本も保証されません。
それでも、保有している間に配当が入ってくることは、長期投資を続ける上で大きなモチベーションになります。
株を少しずつ買う。
保有株数が増える。
それに伴って、受け取る配当金も増えていく。
私自身の配当金の推移を見ても、それはかなり実感があります。
相場のプレッシャーに振り回されず、根気強く続けていると、いつしか、
「自分がお金を稼ぐだけではなく、持っている株もお金を稼いでくれている」
という感覚が出てきます。
私は配当が好きです。
しかし、だからこそ思います。
高配当株なら、何でも買えばいいわけではありません。
高配当に目がくらんだこともある
以前、私はあるパチンコ関連メーカーの株を保有していました。
購入理由の一つは、高い配当利回りでした。
しかし今振り返ると、もっと冷静に業界そのものを見るべきだったと思います。
日本人の趣味は多様化しました。少子高齢化も進んでいます。私は普段利用していないこともあり、需要がこれからどう変わるのかを自分の感覚でも十分につかめていませんでした。
こうしたことを考えれば、国内の遊技関連産業が今後大きく成長していくのかどうかは、慎重に見る必要がありました。
それでも私は、目先の配当利回りに惹かれてしまいました。
しかし、いくら配当利回りが高くても、株価が長期間上がらない、あるいは下がり続けるのであれば、投資全体としての魅力は薄れてしまいます。
しかも私は、そもそもパチンコをしません。
自分が商品やサービスを利用したこともなく、その業界を十分理解していないのであれば、なおさら慎重に調べるべきでした。
ここで一度、高配当株を見るときの考え方を整理してみます。
同じ「高配当株」でも、見る角度によって判断はかなり変わります。

配当利回りは、相場環境によって変わる
私は「何%以上なら高配当株」という明確な基準を持っていません。
なぜなら、配当利回りは相場環境によって大きく変わるからです。
コロナ禍の株価急落時には、配当利回り5%を超える銘柄もかなりあったと記憶しています。
一方で、現在のような環境であれば、私の感覚では2~3%程度あれば、まず配当面では十分です。
ただし、利回りが高いか低いかだけで投資判断をすることはありません。
例えば、創業○周年などの記念配当が加わり、その年だけ高利回りに見えることがあります。
逆に、成長途上の企業なら、配当よりも設備投資や研究開発、海外展開などに資金を使った方が、将来の企業価値を高めることもあります。
配当が少ないから悪い会社とは限りません。
大切なのは、現在の利回りという一点ではなく、
その会社がこれまでどのように利益を生み、今後も株主へ還元できるのか
を見ることだと思っています。
では、配当利回り以外に何を見るのか。
私が実際に重視していることを5つに整理すると、次のようになります。

過去の配当実績を見る
まず確認するのは、過去の一株当たり配当金の推移です。
毎年安定して配当を出しているのか。
減配を繰り返していないか。
一株当たり配当金が少しずつ増えているのか。
私は単年度の利回りより、数年間の流れを見ます。
一株配当が継続的に増えている会社は、利益成長や株主還元余力が高まっている可能性があります。
ただし、増配しているというだけで安心するわけではありません。
その増配を何で支えているのかまで見ることが大切です。
配当性向を見る
株主還元は大切です。
しかし企業には、将来の利益を作るための投資も必要です。
設備投資、研究開発、新商品、M&A、海外進出。
利益のほとんどを配当に回してしまえば、こうした成長投資に使える資金は当然少なくなります。
そのため私は配当性向も確認します。
明確なカットラインではありませんが、個人的には50%前後を一つの目安として見ています。
もちろん、業種や企業の成長段階によって水準は違うと思いますが各年の変化は見ておきます。
成熟企業であれば、成長投資より株主還元に多くの資金を振り向ける経営も合理的です。
例えばJTのような成熟産業の企業を見る場合も、配当性向の高さだけで判断するのではなく、国内市場だけでなく海外事業が今後どれだけ利益を支えられるのかを見る必要があると思っています。
財務と有利子負債を見る
私が今、かなり重視しているのが財務の健全性です。
利益が十分に出ていないのに配当だけを多く出している会社や、有利子負債が異様に大きい会社は、基本的には投資候補から外すようにしています。
特に金利が上昇する局面では、銀行借入や社債が多い企業ほど、支払利息の増加が利益を圧迫する可能性があります。
高い配当利回りに魅力を感じても、会社の財務そのものが不安定であれば、私は安心して長期間保有できません。
健全経営の会社なら、一時的に株価が下がっても比較的落ち着いて待てます。
逆に財務に問題がある会社を持っていると、
「株価は大丈夫か」ではなく、「この会社そのものが大丈夫か」
ということが気になってしまいます。
そうなると、長期投資どころではありません。
業界での強さと成長余地を見る
私は投資先を考えるとき、まず業界トップ企業を優先して検討します。
トップ企業には、規模だけでなく、ブランド、販売網、顧客基盤、技術力、人材など、長い時間をかけて築いた強みがあることが多いからです。
もちろん、業界トップでなくても構いません。
特定分野で高いシェアを持っていたり、他社にはない技術や商品力を持っていたりする企業も十分候補になります。
もう一つ重視しているのが海外です。
国内市場が成熟していても、海外売上比率が高い会社や、これから海外で販売を伸ばせる余地が大きい会社には成長の可能性があります。
配当を生み出すのは、結局のところ企業の利益です。
だから私は、
「この会社はこれからも利益を稼ぎ続けられるのか」
を考えます。
自分が理解できる会社や商品かを見る
特に投資を始めたばかりの人なら、まったく知らない業界より、自分が知っている会社から検討する方がいいと私は思っています。
例えば、私は藤倉コンポジットの株を保有しています。
ゴルフをする人ならご存じの方も多いと思いますが、ゴルフクラブ用のシャフトを手掛けている会社です。
ゴルフでは、クラブヘッドだけではなくシャフトも非常に重要です。
自分のスイングリズムやヘッドスピードに合わせてフィッティングを行い、シャフトを交換する人も少なくありません。
私自身も藤倉のシャフトを使ったことがあります。
プロゴルファーにも使用者が多い。
だから私は、決算書の数字だけではなく、
「この製品が支持される理由が分かる」
という実感を持つことができます。
もちろん、商品が好きだからという理由だけで株を買うわけではありません。
業績推移も見る。
財務も見る。
有利子負債も確認する。
その上で、数字だけでは見えにくい製品の良さや、顧客が選ぶ理由を自分自身で理解できることも、投資判断の一つになると思っています。
先ほどのパチンコ関連企業とは、ある意味で対照的です。
どちらが必ず良い投資になるという話ではありません。
ただ、自分が理解できる会社の方が、何か変化が起きたときにも判断しやすいということです。
配当は「高いか」より「続けられるか」
ここまで書いてきた通り、私は高配当株そのものを否定しているわけではありません。
むしろ配当は好きです。
ただし、高い配当利回りは、それ単体では投資理由になりません。
配当利回り5%の会社より、利回り2~3%でも、利益が伸び、財務が健全で、今後増配していけそうな会社の方が、長く安心して持てることもあります。
長期投資で大切なのは、
今いくらもらえるかより、その配当を何年もらい続けられるか。
私はそう考えています。
受け取った配当金は、また株へ
私の場合、受け取った配当金は基本的に証券口座から引き出しません。
そのまま次の投資資金として使っています。
配当金が入れば、また株を買う。
その株から、また配当を受け取る。
私は株を買うこと自体が好きで、ある意味では趣味のようなところもあるので、これを自然に続けてきました。
もちろん、必要なものがあるなら配当を使ってもいいと思います。
投資は、生活を犠牲にするためにするものではありません。
ただ、今すぐ欲しいものがないのであれば、私はまた株を買って、将来に備える方を選んできました。
NISAを利用している人なら、受け取った配当を翌年の投資資金として活用する考え方もあるでしょう。
NISAについては、また別の記事で書いてみたいと思っています。
配当は、企業を見る入口
配当利回りという数字は、とても分かりやすいものです。
4%、5%と表示されていれば、魅力的に見えます。
でも、その数字だけを見ていると、企業の本当の姿を見失うことがあります。
なぜ、その会社はその配当を出せるのか。
それは来年も続くのか。
5年後、10年後も利益を生み出しているのか。
私は今では、配当利回りを見ると同時に、むしろそういうことを考えるようになりました。
高配当株を探すというより、
長く持ち続けられる会社を探す。
その会社が成長し、利益を伸ばし、その結果として配当も増えていく。
私にとっては、それが一番理想的な形です。
「高配当だから買う」のではなく、「良い会社を持った結果として、配当も受け取れる」。
これからも、その順番を大切にしていきたいと思っています。
奥野以道

