【第3回】30万円台から1億円まで|失敗から学んだ「身を滅ぼさない投資術」

失敗から学んだ身を滅ぼさない投資術|30万円台から1億円まで 投資の考え方

前の記事では、30万円台から始めた株式投資が、長い時間をかけて1億円ほどになるまでを書きました。

振り返ると、うまくいったことだけではありません。

むしろ今の投資スタイルを形づくったのは、成功よりも失敗だったように思います。

ネット掲示板を見て、よく知らない会社を買ったこと。

信用取引で大きなポジションを持ち、追証に追い込まれたこと。

「これだけ大きな会社なら大丈夫だろう」と考えていたJALが経営破綻し、保有株を2円で売ったこと。

どれも苦い経験です。

しかし、その失敗があったからこそ、私は株式投資に対して少しずつ慎重になりました。

そして今では、

株式投資では、失敗そのものを恐れる必要はない。

ただし、身を滅ぼす失敗だけはしてはいけない。

そう考えています。

掲示板を見て買った株が倒産した

ITバブルの頃、私はアソシエントテクノロジーという会社の株を買いました。

きっかけはネットの株式掲示板です。

当時の掲示板には、

「これから上がる」

「この会社はすごい」

といった書き込みがあふれていました。

今で言えば、SNSで話題になっている銘柄を、その勢いのまま買うような感覚だったのかもしれません。

ところが私は、その会社について十分に理解していたわけではありません。

何をしている会社なのか。

どうやって利益を上げているのか。

財務は健全なのか。

経営者は信頼できるのか。

そうした基本的なことを十分に調べないまま買っていました。

結果、その会社では不正会計が問題となり、最終的には経営破綻しました。

この経験から学んだことは、非常に単純です。

自分が理解できない会社に、自分の大切なお金を置かない。

他人が「上がる」と言っていることと、その会社が本当に良い会社であることは、まったく別の話です。結果的に不正会計が明らかになった会社ですから、そもそも「良い会社だった」とは言えません。ただ、会社の生い立ちや事業内容、財務などを自分なりに調べていれば、少なくとも掲示板の勢いだけで買うことはなかったと思います。

私は企業に投資したつもりでしたが、実際には「期待」に投資していたのだと思います。

良い会社でも、買い方を間違えれば危険になる

もう一つ忘れられないのが、ドワンゴです。

ドワンゴそのものを悪い会社だと思っているわけではありません。

むしろ面白い会社だと思っていました。

問題だったのは、私の買い方です。

私はドワンゴ株を信用取引で大量に買いました。

値動きが非常に激しく、うまくいった日には、1日の値動きだけで車が1台買えるくらいの利益になったこともあります。

しかし、その逆もありました。

大きく上がる株は、大きく下がります。

しかも信用取引です。

自分の手元にあるお金以上のポジションを持つことになりますから、利益も大きくなりますが、損失も大きくなります。

株価が下がり、含み損が膨らむ。

本来であれば、そこで一度冷静に判断しなければいけません。

しかし私は、

「明日は戻るだろう」

「明日は挽回できる」

と考えていました。

根拠はありません。

損失を確定したくなかっただけです。

結果、損切りは遅れ、追証に追い込まれました。

なぜ個人投資家に信用取引を勧めないのか

私は今後、信用取引をするつもりはありません。

制度そのものを否定するつもりはありませんが、少なくともサラリーマン投資家には、あまりおすすめできないと考えています。

理由は、信用取引が実質的には借金をして株を買う行為だからです。

借りたお金で取引する以上、どうしても「早く利益を出さなければ」という気持ちが強くなります。

その通りに株価が動けば問題ありません。

しかし逆に動いたとき、心理状態が現物株とは変わってしまう。

「絶対に儲けなければいけない」

「ここで損を確定できない」

という感情が入りやすくなる。

すると、相場の自然な流れに合わせて判断できなくなります。

投資をしているはずなのに、いつの間にかギャンブルに近づいてしまう。

私は自分の経験から、その怖さを強く感じています。

投資では、利益を急がないことがとても大切です。

信用取引は、その「急がない」という姿勢を崩しやすい仕組みだと思っています。

JALで知った「大きい会社=いい会社」ではないということ

その後、もう一つ大きな失敗を経験しました。

JAL、日本航空です。

私は昔から、大企業にはある程度の安心感を持っていました。

最初に買った三菱重工もそうです。

「これだけ大きな会社なら、簡単には倒産しないだろう」

そう考えていました。

ところが2010年、日本航空は経営破綻しました。

私はJAL株を保有しており、最終的には2円で売却しました。

これは非常に苦い経験です。

「日本を代表する航空会社」

「社会に必要な会社」

「知名度の高い大企業」

それでも、株主の資産が守られるわけではありませんでした。

ここで私は、

大きい会社だから、いい会社とは限らない

ということを実感しました。

さらに言えば、

いい会社だから、いい株とは限らない。

そして、

いい株を買っても、買い方を間違えれば、いい投資にはならない。

この三つは、今でも強く意識しています。

では、私にとって「いい会社」とは何か

もちろん、会社が大きいこと自体を否定しているわけではありません。

大企業には、大企業ならではの強みがあります。

ただし今は、規模だけでは判断しません。

現在の私が重視する「いい会社」の基準

  1. 強固な競争力: 業界首位、または他社が簡単にまねできない技術を持っているか?高いシェアがあるか?
  1. 健全な財務:特に有利子負債が多すぎず、金利上昇に耐えられるか?
  1. 稼ぐ力の持続性: なぜその会社が利益を出し続けられるのか明確な理由があるか?

そうした点を重視します。

企業には、「なぜその会社が利益を出し続けられるのか」という理由が必要だと思っています。

もう一つ、最近特に注意しているのが有利子負債です。

金利が上昇する局面では、借入金の多さは企業収益を圧迫します。

有利子負債が過大であれば、利益が金利負担に吸収される。

そうなれば株価も上がりにくくなりますし、配当に回せる余力も小さくなります。

もちろん、不動産やインフラなど業種によって適正な負債水準は違います。

ですから単純に数字だけを比べるのではなく、その業界の標準も考えながら判断します。

私にとっての「いい会社」は、単に有名な会社ではありません。

競争力があり、財務に無理がなく、長く利益を積み上げられる会社。

そう考えるようになりました。

損切りは「負け」ではない

もう一つ、若い頃と大きく変わったのが損切りに対する考え方です。

今は比較的早めに損切りします。

一つの目安として、買値から2割程度下がれば、売却を検討する対象に入れます。

もちろん、株ですから翌日から反発するかもしれません。

損切りした直後に株価が上がることだってあります。

それでも私は、それほど気にしません。

損を確定することでキャッシュが戻ってきます。

その資金で、もっと魅力的だと思う株を買うことができます。

また、税金面でもメリットがあります。

上場株式の等の売却損は、一定の条件のもとで、上場株式等の譲渡益や配当所得と損益計算できる場合があります。

もし、その企業にまだ将来性を感じているなら、一度売却してリセットした上で、ルールを守って買いなおすという選択肢もあります。

もし、その会社自体には引き続き魅力を感じているのであれば、一度売却した後、税務上の扱いや売買ルールに注意しながら改めて買い直すことも選択肢になります。

私にとって損切りは、「自分の判断が間違っていたことを認める敗北」ではありません。

ポートフォリオを整える作業の一つです。

小さな失敗は、むしろしてもいい

株式投資に失敗はつきものです。

未来を完全に予測することなど、誰にもできません。

どれだけ調べても、買った株が下がることはあります。

企業に不祥事が起きることもあります。

想定外の景気後退や金融危機が起きることもあります。

だから私は、失敗そのものをなくそうとは思いません。

むしろ、小さな失敗はしてもいいと思っています。

失敗がまったくないと、人間は少しずつ自信過剰になります。

自分には相場が分かっている。

自分には特別な才能がある。

何を買っても儲かる。

そう思い始めたときの方が危ない。

私自身、ITバブルのときにそうなりました。

利益が出ると、人間は簡単に自分の実力だと勘違いします。

だから時々の小さな失敗は、自分を冷静な場所へ戻してくれる役割もあると思っています。

ただし、身を滅ぼす失敗はしてはいけない

失敗してもいい。

しかし、一つだけ絶対に避けなければいけない失敗があります。

市場から退場するほどの失敗です。

信用取引で過大なポジションを持つ。

一つの銘柄に生活を左右するほど資金を集中する。

根拠のない期待で損切りを先延ばしする。

生活資金まで株式市場に入れる。

こうしたことは、うまくいけば大きな利益になります。

しかし、一度逆に動けば、取り返す機会そのものを失う可能性があります。

株式投資を長く続けるうえで最も重要なことは、

市場から退場しないこと。

私は今、これに尽きると思っています。

相場を当てるより、市場に居続ける

30万円台から始めた私の投資には、いくつもの失敗がありました。

掲示板を信じて株を買いました。

信用取引で欲を出しました。

追証にもなりました。

大企業なら安心だと思っていたJALも経営破綻しました。

それでも、投資をやめませんでした。

失敗したら、やり方を変える。

間違えたと思ったら、一度損を確定する。

外部環境が変われば、見方も変える。

自分の資金力を超える無理はしない。

そしてまた市場に戻る。

結局、投資で大切なのは、毎回正解することではないのだと思います。

欲に溺れず、冷静さを失わず、失敗しても立て直せる範囲にとどめる。

そのうえで、

どうすれば、ずっと市場に居続けられるかを考える。

30万円台から1億円までを振り返って、私が得た一番大きな教訓は、そこにあります。

次回は、1億円を超えてから資産の増え方がどう変わったのか書きます。

奥野以道

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