【第4回】1億円を超えてから、資産の増え方が変わった|「お金に働いてもらう」という感覚

1億円を超えてから資産の増え方が変わった|お金に働いてもらう世界へ 投資の考え方

前回は、30万円台から1億円に届くまでの失敗と、そこから学んだ投資の原則について書きました。

2020年、約7年間の海外駐在を終えて日本に帰国しました。

その頃の資産を正確には覚えていませんが、おそらく株式が4,000万円前後、現金が6,000万円前後。合わせて1億円に届くかどうか、というくらいだったと思います。

株式の大部分は総合商社株でした。

さらに、その中でも三菱商事の比率がかなり高かった。

今振り返ると、ずいぶん偏ったポートフォリオです。

ただ、当時の私は総合商社株をそれほど危険な投資だとは考えていませんでした。

むしろ逆でした。

私の感覚では、市場から低く評価されている割に、事業基盤や収益力は強く変化していたと感じていました。

市場の評価が低かった総合商社

当時の総合商社に対する株式市場の評価は、今ほど高くありませんでした。

「コングロマリット・ディスカウント」

(多様な事業を抱えることで、かえって全体としての評価が低くなる現象)

「何をしている会社なのか分かりにくい」

「資源価格次第で業績がぶれる」

そんな見方も少なくありませんでした。

しかし、私は仕事を通じて総合商社という業界をある程度身近に見てきました。

世間でイメージされるような、単に物を右から左へ動かして利益を得る「貿易会社」ではありません。

さまざまな産業への事業投資。

資源権益。

事業会社の経営。

インフラ。

食品。

エネルギー。

機械。

生活産業。

一社の中に幅広い事業を持っている。

私には、むしろその事業分散が魅力に見えていました。

そして何より、株価評価が低い割には配当も悪くありませんでした。

市場から人気がなくても、会社が利益を出し、配当を払ってくれる。

それなら長く持っていればいい。

そんな感覚でした。

コロナで株価が下がったとき、新規投資を使って分散を始めた

帰国した2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界の株式市場が大きく揺れた年でもありました。

一部のマスク関連など特殊な銘柄を除けば、多くの企業の株価が下落しました。

私はこの時期に、それまで商社株にかなり偏っていた資産を、少しずつ他の業種へ分散していきました。商社株は売らず、駐在で貯めたお金を全て他の業種に振り向けました。

といっても、難しいことをしたわけではありません。

買ったのは、基本的には名前を知っている有名企業。

その中で、比較的割安だと思えるもの。

そしてもう一つ、私が興味を持ったのが株主優待でした。

少し子供じみているかもしれませんが、食品などが家に届くのは単純に嬉しい。

株価が上がるか下がるかだけではなく、

「この会社を持っていると、こんなものが届くのか」

という楽しさもありました。

株主になることを実感できるという意味では、私の投資観とも相性が良かったのだと思います。

こうして、商社株を軸にしながら、食品、製造業、サービス業などへ少しずつ保有銘柄を広げていきました。

ここから先は、相場環境にも恵まれた

ここからの資産増加については、自分の投資判断だけで説明するつもりはありません。

むしろ、かなり相場環境に恵まれたと思っています。

長く続いた金融緩和に加え、コロナ禍では世界的に大規模な金融・財政政策が取られました。

その資金の一部が株式市場にも流れ込み、株価を押し上げていった。

私はそう考えています。

要するに、かなりの部分は運が良かった。

投資をしていると、利益が出た理由をすべて自分の能力にしたくなります。

しかし相場全体が上がっているときは、何を買ってもある程度上がります。

自分の実力なのか。

市場環境のおかげなのか。

そこを取り違えないことは大切だと思っています。

私の場合、この時期にまとまった資産を株式市場に置いていた。

それが結果として大きな追い風を受けました。

やったことは、相変わらず地味だった

相場環境が良かったからといって、私の投資方法が大きく変わったわけではありません。

給与からの入金を続ける。

配当を受け取る。

余裕資金ができれば株を買う。

そして、ほとんど売らない。

基本的には買い一辺倒でした。

もちろん、投資を続けていると色々な情報が入ってきます。

面白そうな会社。

成長しそうなテーマ。

少しマニアックな銘柄。

そういう株にも手を出したことがあります。

ただ、私はどうも、よく知らない会社には愛着が持てません。

しばらく持ってみても、

「なぜ自分はこの会社を持っているのだろう」

と思うようになる。

そういう銘柄は結局売却して整理しました。

その一方で、長く持ち続けられると思った会社は残っていく。

その繰り返しで、少しずつ保有銘柄数が増えていきました。

配当は、時間とともに育っていった

長期保有を続ける中で、もう一つ大きく変化したものがあります。

配当金です。

税引後で受け取った年間配当は、おおよそ次のように増えていきました。

* 2021年:約360万円

* 2022年:約450万円

* 2023年:約580万円

* 2024年:約700万円

* 2025年:約830万円

2021年から2025年までの年間配当(税後)の推移

毎年かなりのペースで増えていきました。

もちろん、新たに株を買っていることも理由の一つです。

しかし、それだけではありません。

企業そのものが増配してくれました。

買ったときには特別な高配当株ではなかった会社でも、長く持っているうちに配当が増えていく。

すると、取得した価格に対する配当利回りは自然と高くなります。

私はこれを長期投資の面白さの一つだと思っています。

今の配当利回りだけを見て株を買うのではなく、

この会社が10年後、20年後にどれだけ利益を増やし、どれだけ配当を増やしてくれるか。

長期投資では、そちらの方が重要なのかもしれません。

1億円を超えると、資産の増え方が変わった

株式資産も増えていきました。

年末時点のおおよその金額で見ると、

* 2021年:約9,700万円

* 2022年:約1億6,800万円

* 2023年:約2億4,800万円

* 2024年:約3億円

* 2025年:約4億100万円

2021年から2025年までの株式資産の推移

となりました。

こうして数字を並べると、非常に順調に見えます。

そして実際、1億円を超えたあたりから、資産の増え方がそれまでとは明らかに変わりました。

30万円の資産が10%上昇しても3万円です。

1,000万円なら100万円。

1億円なら1,000万円。

3億円なら3,000万円です。

資産が大きくなると、自分が給与から追加する金額よりも、市場の値動きによる増減の方がはるかに大きくなる。

ここから先は、私が一生懸命お金を貯めたから資産が増えた、という世界ではなくなっていきました。

企業が利益を出す。

株価が上がる。

配当が増える。

それによって、すでに持っている資産そのものが働くようになる。

これが、1億円を超えてから感じた一番大きな変化です。

だからといって、投資ポリシーは変わらなかった

資産額は増えました。

しかし、投資に対する考え方が劇的に変わったわけではありません。

良いと思う会社を買う。

できるだけ長く持つ。

配当を受け取る。

無理な取引をしない。

市場から退場しない。

基本的には、1億円になる前と同じです。

むしろ資産が増えたからこそ、余計なことをしない方がいいと思うようになりました。

資産額を他人と競争しない

投資をしていると、

「資産1億円」

「3億円」

「5億円」

という数字が目につきます。

SNSや動画を見れば、もっと大きな資産を持っている人もいくらでもいます。

しかし私は、他人と資産額を競争しない方がいいと思っています。

なぜなら、そこから投資がゲームになってしまうからです。

「あの人より増やしたい」

「もっと早く5億円にしたい」

「次は10億円だ」

そう考え始めると、いつか投資のルールを破りたくなる。

もっと大きなリスクを取れば、もっと早く増えるかもしれない。

信用取引を使えばいい。

集中投資すればいい。

値動きの激しい株を買えばいい。

私は若い頃、一度それで失敗しています。

だから、同じ失敗はしたくありません。

お金が増えたことは、才能の証明ではない

資産額が増えたからといって、自分が特別に賢い人間になったわけでもありません。

投資では、運もあります。

時代もあります。

金利もあります。

為替もあります。

政府や中央銀行の政策もあります。

そして何より、世界で明日何が起こるかなど、誰にも分かりません。

株式市場である程度うまくいったからといって、

「自分には未来が見える」

などと思い始めたら危険です。

むしろ資産が大きくなればなるほど、

自分には分からないことがたくさんある

という前提で相場と向き合った方がいい。

私はそう考えています。

お金はないより多い方がいい。でも、それだけではない

もちろん、お金はないよりあった方がいいと思います。

経済的な安心感は増えます。

選択肢も増えます。

将来に対する不安も小さくなります。

ただ、人生の幸福度が資産総額だけで決まるわけではありません。

1億円の人より5億円の人の方が5倍幸せなのか。

そんなことはないでしょう。

だから私は、資産を増やすこと自体を人生の目的にはしたくありません。

仕事もする。

趣味も楽しむ。

お金も使う。

そして余裕があれば、また株を買う。

少し寄り道をしながら、投資を続けていく。

そのくらいでいいのだと思っています。

2020年に約1億円だった資産は、その後数年間で大きく増えました。

しかしその理由を一言で言えば、

特別な投資法を見つけたからではありません。

良い相場環境に恵まれ、長く持っていた企業が成長し、配当が増え、そこに追加投資を続けた。

それだけです。

だからこそ、今後相場環境が逆風になったときにも、同じように冷静でいられるか。

私にとっては、そちらの方がずっと大切です。

奥野以道

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