なぜ私は総合商社株を長期保有するのか?
私の株式ポートフォリオでは、総合商社株が大きな割合を占めています。
(→第4回「1億円を超えてから、資産の増え方が変わった」へ)
今でこそ総合商社株は人気があります。
しかし、私が買い集めていた頃は、今ほど市場から高く評価されていたわけではありませんでした。
「何をしている会社なのか分かりにくい」
「コングロマリット・ディスカウントで評価されにくい」
「資源価格に業績が左右される」
そんな見方も多かったと思います。
それでも私は、総合商社という会社には長期で資金を置く価値があると考えていました。
なぜなのか。
一番大きな理由は、私は総合商社の強さが、単に「商売の種類が多いこと」ではないと思っているからです。
一番の財産は「人」だと思う
総合商社の強みとしては、
人材。
情報力。
資金力。
世界中に広がるネットワーク。
そうしたものがよく挙げられます。
もちろん、どれも重要です。
その中でも、私が最も重視しているのは人材です。
総合商社は長年、学生の就職先として高い人気を維持してきました。
難関大学の学生も多く入社します。
もちろん、学歴が高ければ必ず優秀なビジネスマンになるわけではありません。
しかし、競争の激しい採用を通過し、多様な能力を持った人材が継続的に集まっているということ自体には意味があると思っています。
結局、会社というものを動かすのは人です。
新しい事業を考えるのも人。
海外の交渉相手と信頼関係を築くのも人。
失敗した事業から撤退を決断するのも人。
そして、世界で想定外のことが起きたときに突破口を見つけるのも人です。
私は昔から、
「企業の最後の競争力は、人材なのではないか」
と考えています。
だから優秀な人材が長期間集まり続ける業界には、それだけで一定の強さがあると思っています。
総合商社は、単なる「貿易会社」ではない
総合商社というと、
海外から商品を仕入れ、日本へ持ってくる。
あるいは日本の商品を海外へ販売する。
そんな「貿易会社」のイメージを持つ人もいるかもしれません。
もちろん、トレーディングは現在でも重要な機能です。
しかし、現在の総合商社の収益構造は、それだけではありません。
事業への投資。
資源権益。
事業会社の経営。
エネルギー。
食品。
金属。
機械。
インフラ。
生活産業。
さまざまな分野に資本を投じ、その事業そのものから利益を得ています。
つまり、単に商品を右から左へ動かす会社ではなく、
世界中に多くの事業を持つ巨大な事業ポートフォリオ
のようなものだと私は捉えています。
総合商社が1990年代以降、仲介型ビジネスから、事業投資・経営参画型へと軸足を移してきたことは、外部資料でも指摘されています。
製造業とは違う「身軽さ」
総合商社について、もう一つ私が評価していることがあります。
事業の入れ替えが比較的しやすいことです。
製造業には大規模な設備やサプライチェーンがあるため、事業転換に時間を要する場合があります。
一方、総合商社は事業投資先の入れ替えや資本配分を通じて、比較的機動的にポートフォリオを変えられる。
この点は、銀行とよく似ているかもしれません。銀行も世の中になくてはならない業種業界ですが、人により、好き嫌いが分かれる業界です。
でもどちらも市場原理に則ってビジネスを遂行しているだけなのかもしれません。
いずれにせよ、問題のある事業を何年も抱え続けるより、一度損失を確定して次の成長分野へ資金を振り向ける。
私は、この機動力も総合商社の強さの一つだと思っています。
分かりにくい会社だから、株価も安かった
私が総合商社株を集めていた頃、市場からの評価は決して高くありませんでした。
おそらく理由の一つは、あまりにも多くの事業を持っているため、外部の投資家から企業価値が見えにくかったことだと思います。
よく、「ラーメンからミサイルまで」などと、総合商社を形容することもありますが、兎に角、関連する業界は非常に多岐にわたります。
事業が多岐にわたり、資源価格にも左右されるため、市場から評価しにくい会社だったのでしょう。
そのことも低いPER・PBRの一因だったのかもしれません。
一体、この会社は何の会社なのか。そう思われても不思議ではありません。
しかし私には、それが必ずしも弱点には見えませんでした。
異なる業種を持つことは、景気変動に対する分散にもなります。
また、商社では事業単位の採算意識が比較的強いと私は感じています。
業績が悪い事業を、他部門が何となく支え続けるというより、
「この事業は本当に資本コストに見合っているのか」
という判断がされやすい。
少なくとも、私はそのような企業文化に魅力を感じてきました。
配当を受け取りながら待てた(→配当が長期投資に与えた影響については、第6回でも書きました。)
そして、株主として大きかったのが配当です。
株価がなかなか上がらない時代でも、配当は受け取ることができました。
これは長期投資を続けるうえで大きな支えになります。
歴史のある会社ならではの「純資産の厚さ」と自信があるからこその「累進配当」方針
特に現在では、三菱商事は累進配当を明確な株主還元方針として掲げており、「経営戦略2027」でもその方針を継続しています。
三井物産も、現中期経営計画終了後について累進配当を継続する方針を示しています。
私にとって、
利益を出す。配当を出す。そしてできれば配当を増やす。
という会社は、安心して長く付き合いやすい会社です。
株価が今日上がるか明日下がるかよりも、企業が利益を生み続け、その一部を株主に返してくれる。
その方が重要です。
バフェット氏より先に買っていた(笑)
総合商社株について語ると、どうしてもウォーレン・バフェット氏の話が出てきます。
バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが日本の5大商社へ投資したことは大きなニュースになり、その後、総合商社株への注目度は一気に高まりました。
ただ、私が商社株を買い集めたのはそれより前です。
これは私の見立てが、そう間違っていなかったということかと思い、少し嬉しかった!笑
もちろん、
「バフェットより私の方が見る目がある」
などと言うつもりはありません。
そんなことを言い始めたら、これまでこのブログで書いてきた「謙虚に相場と向き合う」という話と矛盾します。
ただ、
「この業界には市場が評価している以上の価値があるのではないか」
と思って長く持っていたところへ、世界で最も著名な投資家の一人が後から入ってきた。
そのニュースを見たときは、少し嬉しかったのを覚えています。
そして結果として、総合商社株の評価額は大きく上昇しました。
そのため現在の私のポートフォリオでも、総合商社株の時価に占める比率はかなり高くなっています。
商社株にも弱点はある
もちろん、総合商社が万能だとは思っていません。
特に三菱商事や三井物産などは、資源権益から得る利益も大きいため、
原油。
天然ガス。
鉄鉱石。
石炭。
銅。
といった市況の影響を受けます。
資源価格が大きく下落すれば、当然業績にも影響します。
海外事業が多いため、
為替。
地政学。
各国の政治。
規制。
こうしたリスクもあります。
大規模な投資判断を誤れば、巨額の損失を出す可能性もあります。
それでも私は、
だから商社株を持たない
とは考えていません。
日本はエネルギーや資源の多くを海外に依存しています。
世界中から資源を調達し、事業を組成し、供給網をつくる。
この機能そのものが突然不要になるとは考えにくい。
むしろ、世界情勢が複雑になればなるほど、総合商社の持つ情報力やネットワーク、交渉力の価値は高まる可能性があります。
そして何か問題が起きたときには、
優秀な人材が何とか突破口を探してくれるだろう。
最終的には、私はそこを信じています。
なぜ三菱商事なのか
総合商社の中でも、三菱商事は私にとって特別な存在です。
理由は単純で、
総合力では一番強い会社だ
と私自身が評価しているからです。
もちろん、これは私個人の評価です。
伊藤忠商事には伊藤忠の強みがあります。
三井物産にも三井物産の強みがあります。
丸紅にも住友商事にも、それぞれ得意分野があります。
それでも、一つの企業に長期間資金を置くなら、私はできるだけその業界で最も強いと思える会社を選びたい。
これは商社株に限った話ではありません。
製造業であれば世界シェア1位の商品を持つ会社。
サービス業なら業界トップ。
競争力という意味で明確な強みを持っている会社。
そういう会社の方が、10年、20年と持ち続けるときに安心できます。
三菱商事が危なくなる世界をどこまで想定するか
私は投資するとき、最悪のケースもある程度考えます。
しかし、何でも想定すればいいというものでもないと思っています。
例えば、
「三菱商事が存亡の危機にさらされたらどうするか」
と考えてみます。
もちろん個別企業ですから、絶対にあり得ないとは言い切れません。
JALの経営破綻を経験した私が、「大企業だから絶対安全」と言うつもりもありません。
ただ、三菱商事のように世界中に事業を持ち、幅広い産業に関わる会社まで存亡の危機に陥るような状況であれば、日本経済や世界経済そのものが相当な異常事態になっている可能性があります。
そのとき、
「では、どの株なら安全なのか」
という話になります。
おそらく多くの株式が大きな打撃を受けているでしょう。
そこまでの事態を想定して投資そのものを避けていたら、何もできません。
リスクを考えることは重要です。
しかし、
考えても対処できない極端なリスクまで恐れて、何もしなくなる必要はない。
私はそう考えています。
長期保有できる会社とは、結局「信じて待てる会社」
私が総合商社株を長く持っている理由を振り返ると、
高配当だったから。
割安だったから。
事業が分散されているから。
人材が優秀だから。
世界中にネットワークがあるから。
いろいろあります。
しかし最後は、
「何か問題が起きても、この会社なら乗り越えてくれるのではないか」
と思えることなのかもしれません。
株価が下がることはあります。
資源価格が下がることもあります。
巨額の損失を出す年が来るかもしれません。
それでも、事業を立て直し、新しい利益の柱をつくる。
その力があると思える会社なら、株価が下がっても慌てて売る必要はない。
私にとって長期投資とは、
『未来を正確に予想することではなく、未来を任せてもいいと思える会社を持つこと』
なのだと思います。
だから私は、今でも総合商社株を持ち続けていて、そこから産み出す配当金などによって、他業界の株へと分散投資を始めたのです。

