【第16回】稲妻はいつ輝くか分からない|だから私は、良い株を持って市場に居続ける

稲妻が輝く時市場にいなければ意味がないのアイキャッチ画像 投資の考え方

株式投資をしていると、

「今は買うべきか」

「いったん売って、下がったらまた買い直すべきか」

と考えることがあります。

誰だって、できることなら安く買って、高く売りたい。

そして、大きく上がる直前に買えたら理想です。

でも、実際の相場はそれほど単純ではありません。

私は以前から、

「稲妻が輝く時に、市場にいなければならない」

と思っています。

相場の大きな上昇というものは、毎日少しずつ均等にやってくるわけではありません。

ある日突然、大きく上がる。

その日を事前に正確に当てることは、かなり難しい。

だから私は、

「いつ上がるかを当てる」より、「上がる可能性のある会社を持って、市場に居続ける」

ことの方が大切だと思っています。

稲妻が輝く瞬間は、事前には分からない

もし急騰する日が事前に分かるなら、誰も苦労しません。

その一歩手前で買って、上がったところで売ればいい。

しかし、実際にはそんなことはほとんどできません。

株価は業績だけで動くわけではありません。

需給。

金利。

為替。

景気見通し。

地政学。

投資家心理。

さまざまな要因が絡み合い、価格は毎日変化しています。

そして、ある程度予測できる材料は、たいてい市場に織り込まれています。

だから私は、単にPERやPBRが安い会社を見つけても、

「みんな気づいていないお宝株だ」

とはあまり考えません。

市場には大勢の投資家がいます。

機関投資家もいる。

個人投資家もいる。

企業分析を専門にしている人もいます。

それでも株価が安いなら、

* 優先順位が低い

* 興味を持たれていない

* 安く評価される理由がある

そのどれかであることが多いと思っています。

重要なのは、その評価がいつ変わるのかです。

そして、その瞬間こそが、私の言う「稲妻が輝く時」なのだと思います。

実際に「市場に居続けること」が重要だと言われる理由

この考え方は、単なる感覚論ではありません。

J.P. Morgan Asset Managementの資料では、S&P500に2004年7月から2024年7月まで継続して投資していた場合、年率リターンは10.5%でした。

ところが、その20年間で上昇率が高かった10日を逃すと6.2%。

ベスト20日を逃すと3.6%。

ベスト30日を逃すと1.4%まで低下しています。

さらに、ベスト10日のうち7日は、ワースト10日の前後15日以内に発生していました。

つまり、相場が荒れて「怖いからいったん市場から離れよう」と思った時期の近くに、大きな上昇日も現れやすかったということです。 

「市場に居続ける意味|S&P500 ベストデーを逃した場合の年率リターン」

この数字を見ると、

「全部を当てること」は難しくても、「市場から降りないこと」自体が一つの戦略

だと分かります。

ただし、これは指数の話

ここで注意しなければならないことがあります。

S&P500のような指数であれば、弱くなった企業が外れ、強い企業が残るという入れ替えがあります。

しかし、個別株にはそれがありません。

一度買った会社が競争力を失っても、勝手に別の優良企業へ入れ替わってはくれません。

だから個別株では、

市場に居続けることだけでは足りない。

どの会社に居続けるかも重要です。

私は、稲妻がいつ輝くかは分からない。

だからこそ、輝く可能性のある場所に立っておく。

という考え方をしています。

総合商社株で起きた「評価の変化」

分かりやすい例の一つが、総合商社株だと思います。

総合商社は長い間、

「何をやっている会社か分かりにくい」

「コングロマリットディスカウントがある」

「資源価格に左右される」

などの理由で、低く評価されることが珍しくありませんでした。

PERやPBRを見れば安い。

配当もある。

それでも、

「商社とはそういうものだ」

という市場の思い込みのようなものがあったように思います。

そこに、バークシャー・ハサウェイによる大手総合商社株への大規模投資が入りました。

もちろん、商社の指標が安いことや、事業構造に強みがあることを理解できたのは、バフェット氏だけではないと思います。

個人投資家でも、商社株が割安だと考えていた人は大勢いたはずです。

それでも、世界的に著名な投資家が実際に大きな資金を投じたことで、市場の見方そのものが変わりました。

そして、その後多くの投資家が追随し、株価も大きく上がっていきました。

企業価値が、その日に突然生まれたわけではありません。

もともとあった価値が、別の角度から評価され始めた。

これも一つの「稲妻」だと思います。

時代が会社に追いつくことがある

三菱重工も、私にとって印象的な例です。

私はロシア・ウクライナ戦争が始まった頃に、少し同社株を買いました。

その後、防衛関連需要、自衛隊の装備増強、エネルギー、重電関連など、さまざまな追い風が重なりました。

結果として、株価は大きく上昇しました。

しかし、三菱重工がその日突然別の会社になったわけではありません。

技術力も、人材も、事業基盤も、以前から持っていたものです。

変わったのは、世界の側です。

地政学が変わった。

政策が変わった。

エネルギーを取り巻く状況が変わった。

それまで地味に見えていた会社の強みが、突然大きく評価されるようになった。

私はこういう株を見ると、

会社が時代にハマる瞬間がある

と思います。

M&Aや資本政策も、突然評価を変える

稲妻は、地政学や著名投資家の参入だけではありません。

M&Aによって収益構造が変わり、市場評価が大きく変わることもあります。

私が保有している横浜ゴムなども、M&Aによって事業構成が変化し、市場からの見られ方が変わった企業の一つだと思っています。

また、親子上場解消の思惑やTOBなどで、子会社の株価が突然大きく上昇することもあります。

こうしたニュースを、一般の個人投資家が事前に正確に読むことは難しい。

内部情報を知ることなど、当然できません。

だから私は、

ニュースが出てから買えばいい

とも思っていません。

ニュースが出た瞬間に株価が大きく上昇すれば、昨日までの値段ではもう買えません。

稲妻は、知らせてから光るわけではないのです。

稲妻を待つ間、何もしないわけではない

では、

「そのうち何か起こるだろう」

と、何でも買って放置しておけばいいのでしょうか。

もちろん、そうは思いません。

私が持ち続けるために重視しているのは、

その会社に業績を稼ぎ出す基盤があるか

ということです。

業界の中で、どんな立ち位置にいるのか。

高いシェアを持っているのか。

技術力があるのか。

販売力があるのか。

海外で成長できるのか。

財務は健全なのか。

すべてを完璧に理解できるわけではありません。

それでも、自分なりに、

「この会社なら、簡単には負けないのではないか」

と想像できる会社を選びます。

そして、少なくとも私は、配当を出せる会社にしか基本的には投資しません。

配当を出せるということは、株主に還元できるだけの利益やキャッシュを生み出す力があるかどうかを見る、一つの材料になるからです。

株主総会に行くのも、私にとっては投資の一部

私は半期に一度くらい、気になる会社の株主総会に参加します。

すべての会社へ行けるわけではありませんし、株主総会に参加しなければ投資できないわけでもありません。

でも私は、これを楽しみの一つとして捉えています。

実際に経営陣を見る。

どんな人たちが会社を経営しているのか。

どこへ会社を進めようとしているのか。

株主からどんな質問が出るのか。

どんな株主が多いのか。

こうしたことは、決算書だけではなかなか分かりません。

投資では数字が重要です。

でも、企業を動かしているのは人です。

私は以前から、

会社は結局、人だ

という感覚を持っています。

だから、実際の経営者の話を聞くことも、長く株を持つ上では勉強になると思っています。

稲妻を予測するのではなく、稲妻が起きたときそこにいる

私は、急騰を予測する自信はありません。

むしろ、

本当に予測できるなら、その直前にだけ買えばいい。

そう思っています。

でも、それができない。

だから長期投資をしています。

市場には、予測できないことがたくさんあります。

戦争。

政策転換。

M&A。

TOB。

著名投資家の参入。

事業再編。

技術革新。

突然の自社株買い。

こうしたものを全部当てることは不可能です。

でも、

どの会社なら、そうした変化を追い風にできそうか

を考えることはできます。

私は世界の政治や経済を見ながら、

その中で逞しく生き残り、むしろ変化を利用して成長できそうな会社を選びたいと思っています。

「いつ輝くか」は分からない。だから「どこで待つか」を考える

株式投資をしていると、

「いつ買えばいいか」

「いつ売ればいいか」

を知りたくなります。

でも私は、そこにあまり答えを求めません。

いつ稲妻が輝くかは分からない。

それなら、

稲妻が輝く可能性のある場所に、先に立っておく。

そして、その場所が本当に正しいのかを、ときどき確認する。

業績を見る。

財務を見る。

配当を見る。

業界を見る。

経営を見る。

そして、まだ持つ理由があるなら、簡単には離れない。

私はその方が、自分には合っています。

市場に居続けること。そして、居続ける場所を間違えないこと

S&P500のような指数では、市場に居続けることそのものに大きな意味があります。

しかし、個別株投資ではもう一つ必要です。

居続ける場所を選ぶこと。

良い会社。

業界で強い会社。

利益を稼げる会社。

財務が健全な会社。

変化に対応できる会社。

そういう会社を選んで持っている。

そして、ある日突然、稲妻が輝く。

それがいつなのかは分かりません。

だから私は、当てようとはしません。

「相場を当てるより、相場に対処する。」

そのために、私は良いと思う会社を選び、市場に居続けます。

稲妻がいつ輝くかは分からない。

でも、

輝く可能性のある場所に立っておくことはできる。

それが、私の長期投資の考え方です。

奥野以道

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